じんぞうにんげんじけん
人造人間事件

冒頭文

1 理学士帆村荘六(ほむらそうろく)は、築地(つきじ)の夜を散歩するのがことに好きだった。 その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨(あきさめ)にそぼ濡れながら、明石町(あかしちょう)の河岸(かし)から新富町(しんとみちょう)の濠端(ほりばた)へ向けてブラブラ歩いていた。暗い雨空(あまぞら)を見あげると、天国の塔のように高いサンタマリア病院の白堊(はくあ)ビルがクッキリと暗闇に聳(そび)

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月

底本

  • 海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島
  • 三一書房
  • 1989(平成元)年4月15日