かみなり

冒頭文

1 山岳重畳(さんがくちょうじょう)という文字どおりに、山また山の甲斐(かい)の国を、甲州街道にとって東へ東へと出てゆくと、やがて上野原(うえのはら)、与瀬(よせ)あたりから海抜の高度が落ちてきて、遂に東京府に入って浅川あたりで山が切れ、代り合って武蔵野(むさしの)平野が開ける。八王子市は、その平野の入口にある繁華な町である。 ——待って下さい、その八王子を、まだ少し東京の方へゆく

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

底本

  • 海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島
  • 三一書房
  • 1989(平成元)年4月15日