かそうこくふうけい
火葬国風景

冒頭文

甲野八十助(こうのやそすけ) 「はアて、——」 と探偵小説家の甲野八十助は、夜店の人混みの中で、不審のかぶりを振った。 実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、一向に栄(は)えない万年新進作家だった。およそ小説を書くにはタネが要(い)った。殊(こと)に探偵小説と来ては、タネなしに書けるものではなかった。ところで彼は或る雑誌社から一つの仕事を頼まれているのであるが

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝都日日新聞」1935(昭和10)年

底本

  • 海野十三全集 第3巻 深夜の市長
  • 三一書房
  • 1988(昭和63)年6月30日