ばくおう
獏鸚

冒頭文

1 一度トーキーの撮影を見たいものだと、例の私立探偵帆村荘六が口癖のように云っていたものだから、その日——というと五月一日だったが——私は早く彼を誘いだしに小石川のアパートへ行った。 彼の仕事の性質から云って、正に白河夜船か或いは春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えずぐらいのところだろうと思っていったが、ドアを叩くが早いか、彼が兎のように飛び出してきたのには尠(すくな)からず駭(

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1935(昭和10)年5月

底本

  • 海野十三全集 第3巻 深夜の市長
  • 三一書房
  • 1988(昭和63)年6月30日