くうしゅうかのにほん
空襲下の日本

冒頭文

戦慄の日は近づく ——昭和×年三月、帝都郊外の若きサラリーマンの家庭—— 「まあ、今日はお帰りが遅かったのネ」 「うんフラフラになる程疲労(くたび)れちまったよ」 「やはり会社の御用でしたの」 「そうなんだ。会社は東京の電灯を点(つ)けたり、電車を動かしたりしているだろう。だから若(も)し東京が空襲されたときの用心に、軍部の方々と寄り合って、いろいろと打合わせをしたんだよ」

文字遣い

新字新仮名

初出

「日ノ出 付録 國難來る! 日本はどうなるか」1933(昭和8)年4月

底本

  • 海野十三全集 第3巻 深夜の市長
  • 三一書房
  • 1988(昭和63)年6月30日