かりさかごえ
雁坂越

冒頭文

その一 ここは甲州(こうしゅう)の笛吹川(ふえふきがわ)の上流、東山梨(ひがしやまなし)の釜和原(かまわばら)という村で、戸数(こすう)もいくらも無い淋(さみ)しいところである。背後(うしろ)は一帯(いったい)の山つづきで、ちょうどその峰通(みねどお)りは西山梨との郡堺(こおりざかい)になっているほどであるから、もちろん樵夫(きこり)や猟師(りょうし)でさえ踏(ふ)み越(こ)さぬ位の仕方の無

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ちくま日本文学全集 幸田露伴
  • 筑摩書房
  • 1992(平成4)年3月20日