びんじょうのずえ
便乗の図絵

冒頭文

便乗ということばが、わたしたちの日常にあらわれたのはいつごろからのことだったろうか。 日本の天皇制権力が満州・中国と侵略をすすめて、世間の輿論も、議会の討論も邪魔と考えはじめてから、日本全国には政治がなくなって強権の専断ばかりになった。その時分、翼賛会ができた。議会は政府案に決して反対しないという条件の翼賛議会になり、侵略戦争賛成、種々の人権抑圧法賛成、いくらでも軍事費をつかうこと賛成と

文字遣い

新字新仮名

初出

「光」1948(昭和23)年9月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十六巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年6月20日