ゆうびんきって
郵便切手

冒頭文

これまで、郵便切手というものは、私たちのつましい生活と深いつながりのある親しみぶかいものであった。三銭の切手一枚で封書が出せた頃、あのうす桃色の小さい四角い切手は、都会に暮しているものに故郷のたよりを、田舎に住んでいるものに、都会の生活の物語をもたらす仲だちであった。私の子供の時分には、台帳に一枚ずつ切手を貼ってゆく郵便貯金のやりかたがあった。一日に一銭でも、二銭でも、切手を買って貼りつけていって

文字遣い

新字新仮名

初出

「労働者」1946(昭和21)年10・11月合併号

底本

  • 宮本百合子全集 第十六巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年6月20日