わかなのうち
若菜のうち

冒頭文

春の山——と、優に大きく、申出(もうしい)でるほどの事ではない。われら式のぶらぶらあるき、彼岸(ひがん)もはやくすぎた、四月上旬の田畝路(たんぼみち)は、些(ち)とのぼせるほど暖(あたたか)い。 修善寺(しゅぜんじ)の温泉宿、新井(あらい)から、——着て出た羽織(はおり)は脱ぎたいくらい。が脱ぐと、ステッキの片手の荷になる。つれの家内が持って遣(や)ろうというのだけれど、二十か、三十そこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪朝日新聞」1933(昭和8)年2月5日

底本

  • 鏡花短編集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1987(昭和62)年9月16日