はる

冒頭文

露じもの降りる朝もあるにはあるが、木の芽稍ふくらんで暖かい日和の續く三月。常磐木ならでは野に青い物は無い。軒の下などに霜げ殘りの坊子泣かしだけが去年からの命を青く保つてゐる。まだ有る。戸袋の脇に誰かが厄病除にぶら下げたにんにくから延び出した青い芽。かうして太陽は南方から回つて來るのだ。 ひる過ぎ、學校から戻つた子供達の鞄からいろんな物がのぞいてゐる。お彈きのガラス玉、積細工の人形の首、空

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 雪あかり
  • 書物展望社
  • 1934(昭和9)年6月27日