はしのした
橋の下

冒頭文

一本腕は橋の下に来て、まず体に一面に食っ附いた雪を振り落した。川の岸が、涜(けが)されたことのない処女の純潔に譬(たと)えてもいいように、真っ白くなっているので、橋の穹窿(きゅうりゅう)の下は一層暗く見えた。しかしほどなく目が闇に馴れた。数日前から夜ごとに来て寝る穴が、幸にまだ誰(たれ)にも手を附けられずにいると云うことが、ただ一目見て分かった。古い車台を天井にして、大きい導管二つを左右の壁にした

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 諸国物語(上)
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1991(平成3)年12月4日