しんしこうてい
秦始皇帝

冒頭文

一 支那四千年の史乘、始皇の前に始皇なく、始皇の後に始皇なし。瞶々者察せず、みだりに惡聲を放ち、耳食の徒隨つて之に和し、終に千古の偉人をして、枉げて桀紂と伍せしむ。豈に哀からずや。 こは私が去る明治四十年十月十日、始皇の驪山(リザン)の陵を訪うた當時の紀行の一節である。五年後の今日、復た始皇の傳を作つて、彼の爲に氣を吐くとは、淺からぬ因縁といはねばならぬ。 從來始皇帝

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新日本 第三卷第一號」1913(大正2)年1月

底本

  • 桑原隲藏全集 第一卷 東洋史説苑
  • 岩波書店
  • 1968(昭和43)年2月13日