せきちく
石竹

冒頭文

この頃咲く花に石竹(せきちく)があります。照り続きで、どんなに乾いた磧(かはら)にも、山道にも、平気で咲いてゐるのはこの花です。茎が折れると、折れたままにその次の節からまた姿勢を持ちなほして、伸びてゆくのはこの花です。細くて、きやしやで、日盛りのあるかないかの風にも、しなしなと揺れるほどの草ですが、針金のやうな強い神経をもつてゐて、多くの草花がへとへとに萎(しな)びかかつてゐる灼熱(しやくねつ)の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 泣菫随筆
  • 冨山房百科文庫、冨山房
  • 1993(平成5)年4月24日