南方航路 そのころ太平洋には、眼に見えない妖(あや)しい力がうごいているのが感じられた。 妖しい力? それは一体なんであろうか。 ひろびろとしたまっ青な海が、大きなうねりを見せてなんとなく怒ったような表情をしているのだ。 ときどき、水平線には、一条の煙がかすかにあらわれ、やがてその煙が大きく空にひろがっていくと、その煙の下から一つの船体があらわれる。