くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん
空中漂流一週間

冒頭文

「火の玉」少尉 「うーん、またやって来たか」 と、田毎(たごと)大尉は、啣(くわ)えていた紙巻煙草をぽんと灰皿の中になげこむと、当惑(とうわく)顔で名刺の表をみつめた。前には当番兵が、渋面(じゅうめん)をつくって、起立している。 ここは帝都に近い××防衛飛行隊本部の将校集会所だった。 「ほう、大尉どの。誰がやって来たのでありますか」 一週間ほど前に、この飛行隊へ着任し

文字遣い

新字新仮名

初出

「名作」1939(昭和14)年9月

底本

  • 海野十三全集 第6巻 太平洋魔城
  • 三一書房
  • 1989(平成元)年9月15日