どようふじん
土曜夫人

冒頭文

女の構図 一 キャバレエ十番館の裏は、西木屋町に面し、高瀬川が流れた。 高瀬川は溝のように細い。が、さすがに川風はあり、ふと忍びよる秋のけはいを、枝垂れた柳の葉先へ吹き送って、街燈の暈のまわりに夜が更けた。 しかし、十番館のホールではまだ夏の宵だった。 裳裾のようにパッとひらいた頽廃の夜が、葉鶏頭の花にも似た強烈な色彩に揺れて、イヴニングドレスの背

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 定本織田作之助全集 第七巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日