たきび
たき火

冒頭文

北風を背になし、枯草白き砂山の崕(がけ)に腰かけ、足なげいだして、伊豆連山のかなたに沈む夕日の薄き光を見送りつ、沖(おき)より帰る父の舟(ふね)遅(おそ)しとまつ逗子(ずし)あたりの童(わらべ)の心、その淋(さび)しさ、うら悲しさは如何あるべき。 御最後川の岸辺に茂る葦(あし)の枯れて、吹く潮風に騒ぐ、その根かたには夜半(よわ)の満汐(みちしお)に人知れず結びし氷、朝の退潮(ひきしお)に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文学全集12 国木田独歩石川啄木集
  • 集英社
  • 1967(昭和42)年9月7日