なら
寧楽

冒頭文

寧樂 一 浪華三十日の旅寢、このたびは二度目の觀風なれば、さまでに目新らしくも思へず、東とはかはれる風俗など前よりは委しく知れる節もあれど、六十年の前に人の物せる「浪華の風」といふ一書、温知叢書の中に收められしといたく異なれりと見えざるは、世の移りかはり、疾しといへば、疾きが若きものから、又遲しといへば遲くもあるかな、面白かりしは此の間兩度の寧樂行なり。汽車にて一時間半の道程、往くも來るも旅とい

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「亞細亞」1893(明治26)年7月15日、第二巻第七号(一)、1893(明治26)年8月15日、第二巻第九号(二)

底本

  • 内藤湖南全集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1970(昭和45)年9月15日