ちんもくのとう
沈黙の塔

冒頭文

高い塔が夕(ゆうべ)の空に聳(そび)えている。 塔の上に集まっている鴉(からす)が、立ちそうにしてはまた止まる。そして啼(な)き騒いでいる。 鴉の群れを離れて、鴉の振舞(ふるまい)を憎んでいるのかと思われるように、鴎(かもめ)が二三羽、きれぎれの啼声をして、塔に近くなったり遠くなったりして飛んでいる。 疲れたような馬が車を重げに挽(ひ)いて、塔の下に来る。何物かが車か

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 森鴎外全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年7月24日