そらちがわのきしべ |
空知川の岸辺 |
冒頭文
一 余が札幌(さつぽろ)に滞在したのは五日間である、僅に五日間ではあるが余は此間に北海道を愛するの情を幾倍したのである。 我国本土の中(うち)でも中国の如き、人口稠密(ちうみつ)の地に成長して山をも野をも人間の力で平(たひら)げ尽したる光景を見慣れたる余にありては、東北の原野すら既に我自然に帰依(きえ)したるの情を動かしたるに、北海道を見るに及びて、如何(いか)で心躍らざらん、札幌
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 現代日本文學大系 11 國木田獨歩・田山花袋集
- 筑摩書房
- 1970(昭和45)年3月15日