しょうせつにもちうるてんねん
小説に用ふる天然

冒頭文

小説を作る上では——如何しても天然を用ゐぬ譯には行かないやうですね。譬へば惚れ合つた男女二人が話をしながら横町を通る時でも、晴天の時と、雨天の時とは、話の調子が餘程違ひますからね。天然と言つても、海とか、山とかに限つたことはありません。室内でも、障子とか、襖とか、言ふものは、天然の部に這入つてもよからうと思ひます。だから其の室内の事を書く時でも、天然を見逃がす事は出來ません。また夜更けに話すのと、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鏡花全集 第二十八巻
  • 岩波書店
  • 1942(昭和17)年11月30日