しんらん
親鸞

冒頭文

序 歎異鈔(たんいしょう)旅にもち来て虫の声—— わたくしの旧(ふる)い拙(まず)い句である。こんな月並に耽(ふけ)っていた青年ごろから、自分の思索にはおぼろげながら親鸞(しんらん)がすでにあった。親鸞の教義を味解(みかい)してというよりも——親鸞自身が告白している死ぬまで愚痴鈍根(ぐちどんこん)のたちきれない人間として彼が——直ちに好きだったのである。 とかくわたくし達には正直に人へも対世

文字遣い

新字新仮名

初出

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

底本

  • 親鸞(一)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年8月11日