こうせい
後世

冒頭文

私は知己を百代の後に待たうとしてゐるものではない。 公衆の批判は、常に正鵠を失しやすいものである。現在の公衆は元より云ふを待たない。歴史は既にペリクレス時代のアゼンスの市民や文芸復興期のフロレンスの市民でさへ、如何に理想の公衆とは縁が遠かつたかを教へてゐる。既に今日及び昨日の公衆にして斯(か)くの如くんば、明日の公衆の批判と雖も、亦推して知るべきものがありはしないだらうか。彼等が百代の後

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京日日新聞」1919(大正8)年7月27日

底本

  • 芥川龍之介全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年2月8日