しゅうとめとよめについて
姑と嫁について

冒頭文

或会社の技師をしている工学士某氏の妻が自分に対する苛酷(かこく)を極めた処置に堪えかねて姑を刺したという故殺(こさつ)未遂犯が近頃公判に附せられたので、その事件の真相が諸新聞に現れた。嫁が姑を刃傷(にんじょう)したということは稀有(けう)な事件である。無教育な階級の婦人間においてさえ類例を見出しがたいことであるのに、工学士の妻として多少の教育もあり、女優として立とうと決心していたほど新代の芸術に対

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」1915(大正4)年9月

底本

  • 与謝野晶子評論集
  • 岩波書店、岩波文庫
  • 1985(昭和60)年8月16日