ことしこそは
今年こそは

冒頭文

わたしたち日本の人々は、いつもお正月になると、互に、おめでとう、と云いあって新年を祝う習慣をもっております。これまで戦争のなかで迎えた不安な、切ないいく度かの正月を、わたしたちは、おめでとうとも云えませんわね、と云って迎えながら、やはりその言葉のうちにはおめでとうという文句をいれていました。 一九四六年の正月、つまり一昨年のお正月は、ほんとに何年ぶりかで、まあまあ心からおめでとうと云えた

文字遣い

新字新仮名

初出

NHKラジオ、1948(昭和23)年1月12日放送

底本

  • 宮本百合子全集 第十五巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年5月20日