ひろう
疲労

冒頭文

京橋区三十間堀(さんじっけんぼり)に大来館(たいらいかん)という宿屋がある、まず上等の部類で客はみな紳士紳商、電話は客用と店用と二種かけているくらいで、年じゅう十二三人から三十人までの客があるとの事。 ある年の五月半ばごろである。帳場にすわっておる番頭の一人(ひとり)が通りがかりの女中を呼んで、 「お清(きよ)さん、これを大森さんのとこへ持っていって、このかたが先ほど見えましたがお

文字遣い

新字新仮名

初出

「趣味」1907(明治40)年6月

底本

  • 号外・少年の悲哀 他六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年4月17日、1960(昭和35)年1月25日 第14刷改版