きこく
帰国

冒頭文

一 一行は樹立の深く生茂つた處から、岩の多い、勾配の高い折れ曲つた羊齒の路を喘ぎ喘ぎ登つて行つた。ちびと綽名をつけられた背の低い男が一番先に立つて、それから常公、政公、眇目の平公、子供を負つた女もあれば、木の根に縋り付いて呼吸をきらして登つて行く女もある。年寄もあれば、若い者もある。一行總て十五六人、誰も皆な重さうに荷物を負つて手には折つた木の枝を杖にしてゐた。 十月の初めは、山に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 定本 花袋全集 第七巻
  • 臨川書店
  • 1993(平成5)年10月10日復刻版