ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件

冒頭文

女探偵(おんなたんてい)の悒鬱(ゆううつ) 「離魂(りこん)の妻(つま)」事件で、検事六条子爵がさしのばしたあやしき情念燃ゆる手を、ともかくもきっぱりとふりきって帰京した風間光枝(かざまみつえ)だったけれど、さて元の孤独に立ちかえってみると、なんとはなく急に自分の身体が汗くさく感ぜられて、侘(わび)しかった。 「つよく生きることは、なんという苦しいことであろうか?」 彼女は、日頃のつよさ

文字遣い

新字新仮名

初出

「大洋」1939(昭和14)年9月号

底本

  • 海野十三全集 第7巻 地球要塞
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年4月30日