だいぼさつとうげ 03 みぶとしまばらのまき
大菩薩峠 03 壬生と島原の巻

冒頭文

一 昨日も、今日も、竜之助は大津の宿屋を動かない。 京都までは僅か三里、ゆっくりとここで疲れを休まして行くつもりか。 今日も、日が暮れた。床の間を枕にして竜之助は横になって、そこに投げ出してあった小さな本を取り上げて見るとはなしに見てゆくうちに、隣座敷へ客が来たようです。 「どうぞ、これへ」 女中の案内だけが聞えて、客の声は聞えないが、畳ざわりから考えると

文字遣い

新字新仮名

初出

「都新聞」1914(大正3)年9月4日~12月5日

底本

  • 大菩薩峠1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年12月4日