指がなくて三味線を弾く男 浅草に現はれる乞食は、みなそれぞれに風格を具へてゐるので愉快である。乞食といふ称呼をもってする事は、この諸君に対してはソグハないやうな気がするくらいだ。いかにこれらの諸君が人生の芸術家であるか、また、浅草を彩るカビの華であるかといふことについて語らう。 浅草といふ舞台には、かかる登場者が順次に現はれ、消えてゆく。 指がなくて三味線を弾く男——