こわないこじき
乞はない乞食

冒頭文

指がなくて三味線を弾く男 浅草に現はれる乞食は、みなそれぞれに風格を具へてゐるので愉快である。乞食といふ称呼をもってする事は、この諸君に対してはソグハないやうな気がするくらいだ。いかにこれらの諸君が人生の芸術家であるか、また、浅草を彩るカビの華であるかといふことについて語らう。 浅草といふ舞台には、かかる登場者が順次に現はれ、消えてゆく。 指がなくて三味線を弾く男——

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆85 貧
  • 作品社
  • 1989(平成元)年11月25日