くさやぶ
草藪

冒頭文

附添婦と別れて一人のベッドに数日過した私は、一時多数病室に半月ほど過したのちまた転室した。今度は今までの南窓と対い合って眺められていた向う側の、平家建の二人詰の室のならんだ病棟だった。看護婦さんが寝台車を階段の下まで廻してくれ、それに見知りの附添婦さんなども来て手伝ってくれて、私の身のまわりの物を車に積んだ。最後に私は単衣に羽織を重ねて、片手にカーネーションの花瓶など持って仮住居のベッドの多数部屋

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 鷹野つぎ――人と文学
  • 銀河書房
  • 1983(昭和58)年7月1日