ふろう
浮浪

冒頭文

一 「また今度も都合で少し遅くなるかも知れないよ。どこかへ行つて書いて来るつもりだから……」と、朝由井ヶ浜の小学校へ出て行く伜のFに声をかけたが、「いゝよ」とFは例の簡単な調子で答へた。 遠い郷里から私につれられて来て建長寺内のS院の陰気な室で二人で暮すことになつてから三月程の間に、斯うした目には度々会はされてゐるので、Fも此頃ではだいぶ慣れて来た様子であつた。私が出先きで苦労にしてゐ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「国本」1921(大正10)年5月号

底本

  • ふるさと文学館 第九巻【茨城】
  • ぎょうせい
  • 1995(平成7)3月15日