たろうとまち
太郎と街

冒頭文

秋は洗ひたての敷布(シーツ)の樣に快かつた。太郎は第一の街で夏服を質に入れ、第二の街で牛肉を食つた。微醉して街の上へ出ると正午のドンが鳴つた。 それを振り出しに第三第四の街を歩いた。飛行機が空を飛んでゐた。新鮮な八百屋があつた。魚屋があつた。花屋があつた。菊の匂ひは街へ溢れて來た。 呉服屋があつた。菓子屋があつた。和洋煙草屋があり、罐詰屋があつた。街は美しく、太郎の胸はわくわく

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 梶井基次郎全集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年11月10日