けいきち
奎吉

冒頭文

「たうとう弟にまで金を借りる樣になつたかなあ。」と奎吉は、一度思ひついたら最後の後悔の幕迄行つて見なければ得心の出來なくなる、いつもの彼の盲目的な欲望がむらむらと高まつて來るのを感じながら思つた。 彼にとつてはもうこ((ママ))うなればその醜い欲望が勝を占めてしまふに違ひなかつた。彼は彼で祕かにそれを見越して、それを拒否する意志の働くのを斷念する傾きが出來てゐたのだつた。 彼は今金

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 梶井基次郎全集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年11月10日