かていとがくせい
家庭と学生

冒頭文

今日家庭というものを考える私たちの心持は、おのずから多面複雑だと思う。 家庭は今日大事とされている。貯蓄のことも、生めよ、殖せよということも、モラル粛正も、専ら家庭内の実行にかけられている。 昨夜の夕刊には、大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。すぐ振替えをとることが出来るのだそうだけれど、

文字遣い

新字新仮名

初出

「三田新聞」1941(昭和16)年5月25日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日