でんぽう
電報

冒頭文

一 源作の息子が市(まち)の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の大学へ入っても、当然で、何も珍らしいことはない。噂の種にもならないのだが、ドン百姓の源作が、息子を、市の学校へやると云うことが、村の人々の好奇心をそゝった。 源作の嚊(かゝあ)の、おきのは、隣

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 筑摩現代文学大系 38 小林多喜二 黒島伝治 徳永直集
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年12月20日