もうすこしのしんせつを
もう少しの親切を

冒頭文

近頃、またひとしきり恋愛論が盛になって来ている。どの雑誌にもそういうような論文や座談会の話が出ている。そして、この雑誌も、数頁をそれのために費そうとしているのであるが、私の心には、率直に云って一つの疑いが、此等囂々(ごうごう)たる恋愛論に対して生じているのである。 最近数年間の社会の事情は急速にうつりつつある。現代人の全生活は日夜それらの波に中心を揺られ、或はその縁を洗われ、いずれにせよ

文字遣い

新字新仮名

初出

「白揚」1936(昭和11)年9月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日