さっこんのわだいを
昨今の話題を

冒頭文

大阪の実業家で、もう十四五年も妻と別居し別の家庭を営んでいる増田というひとの娘富美子が大金をもって家出をして、西条エリとあっちこっち贅沢な旅行をした後、万平ホテルで富美子が睡眠薬で自殺しかけた事は、男装の麗人という見出しで各新聞に連日報道された。 父親が写真をうつされ、大阪から上京した母や姉が金のかかった衣類の重い裾さばきをニュース写真にとられた。西条エリは、白眼のきわだった目のまわりに

文字遣い

新字新仮名

初出

「社会評論」1935(昭和10)年3月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日