こせいというもの
個性というもの

冒頭文

あるまじめな女のひとが次のような話をした。「私は十三四からずっと印刷工場の女工をやったんですが、女工といっても職場で気持がちがいますよ。私たちは、拾うものを片端から自分の生活に関係なく読むもんだから文化的な水準は一等高いけれど、どうしても文学少女みたいになっちゃうんです。それが印刷で働いたものの一番の弱点だと思います。」 私はその話から、有名なフォード自動車工場の有様を思い起した。あすこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「輝ク」1935(昭和10)年2月17日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日