りつことさだこ
律子と貞子

冒頭文

大学生、三浦憲治君は、ことしの十二月に大学を卒業し、卒業と同時に故郷へ帰り、徴兵検査を受けた。極度の近視眼のため、丙種(へいしゅ)でした、恥ずかしい気がします、と私の家へ遊びに来て報告した。 「田舎の中学校の先生をします。結婚するかも知れません。」 「もう、きまっているのか。」 「ええ。中学校のほうは、きまっているのです。」 「結婚のほうは、自信無しか。極度の近視眼は結婚のほうにも差支

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 太宰治全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年1月31日