キュリーふじん
キュリー夫人

冒頭文

一九一四年の夏は、ピエール・キュリー街にラジウム研究所キュリー館ができ上ってキュリー夫人はそこの最後の仕上げの用事と、ソルボンヌ大学の学年末の用事とで、なかなか忙がしかった。フランスの北のブルターニュに夏休みのための質素な別荘が借りてあったが、彼女はパリが離れられなくて、まず二人の娘イレーヌとエーヴとを一足先へそちらへやった。お母さんであるキュリー夫人は八月の三日になったならばそこで娘たちと落合っ

文字遣い

新字新仮名

初出

不詳

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日