ものわかりよさ
ものわかりよさ

冒頭文

昔から女にもとめられている日常の美徳の一つに、ものわかりのよさ、ということがある。 とかく女が狭い生活にとじこめられていたために、人生の視野がせばまって、我執だの偏執だのが女につきものの気質のように見られた一方の、その対蹠的な要求とでもいうべきものだったのかもしれない。やきもちをやかないこと、そして物わかりのよいこと。その二つが身に備わっているとなれば、賢い女のうちに入れることはまぎれも

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1940(昭和15)年10月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日