みっつの「おんなだいがく」
三つの「女大学」

冒頭文

何年ぶりかで珍しく上野の図書館へ行った。むかし袴をはいて通った時分からみると婦人閲覧室もずっと広く居心地よいところになったし、いろいろ変っているけれども、本を借り出すところが一段高くなってそこに係の人がいる役所めいた様子は、やっぱりもとのままのこっている。 係のひとの顔のなかには、遠い記憶のなかで見覚えている面ざしもあって、頼んだ本の来る間を、何とはなし立ちかえっての物珍しさというような

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1940(昭和15)年3月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日