おやというにじ
親という二字

冒頭文

親(おや)という二字と無筆の親は言い。この川柳(せんりゅう)は、あわれである。 「どこへ行って、何をするにしても、親という二字だけは忘れないでくれよ。」 「チャンや。親という字は一字だよ。」 「うんまあ、仮りに一字が三字であってもさ。」 この教訓は、駄目である。 しかし私は、いま、ここで柳多留(やなぎだる)の解説を試みようとしているのではない。実は、こないだ或(あ)る無筆

文字遣い

新字新仮名

初出

「新風」1946(昭和21)年1月

底本

  • 太宰治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年4月25日