だいぼさつとうげ 21 むみょうのまき |
| 大菩薩峠 21 無明の巻 |
冒頭文
一 温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟(ひっきょう)、夢でありました。 その翌日の晩、蛇滝(じゃだき)の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。 机竜之助は、軒をめぐる雨滴(あまだれ)の音を枕に聞いて、寂しいうちにうっとりとしていますと、頭上遥かに人のさわぐ声が起りました。 しとしとと降りしきる雨をおかして、十一丁目からいくらかの人が、
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 大菩薩峠7
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1996(平成8)年3月21日