むじゅんのようなしんじつ
矛盾の様な真実

冒頭文

「お前は弟達をちつとも可愛がつてやらない。お前は愛のない男だ。」 父母は私によくそ((ママ))う云つて戒めた。 實際私は弟達に對して隨分突慳貪であつた。彼等を泣かすのは何時でも私であつた。彼等に手を振り上げるのは兄弟中で事實私一人だつた。だから父母のその言葉は一應はもつともなのであるが私は私のとつてゐた態度以外にはどうしても彼等が扱へなかつた。 私はどちらかと云へば彼等に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 梶井基次郎全集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年11月10日