イボタのむし
イボタの虫

冒頭文

無理に呼び起された不快から、反抗的に、一寸(ちよつと)の間(ま)目を見開いて睨(にら)むやうに兄の顔を見あげたが、直(す)ぐ又ぐたりとして、ヅキンヅキンと痛む顳顬(こめかみ)を枕へあてた。私は、腹が立つてならなかつたのだ。目は閉ぢはしてゐても。枕許(まくらもと)に立つてゐて自分を監視してゐるであらう兄の口から、安逸を貪(むさぼ)ることを許さないと云ふ風な、烈(はげ)しい言葉が、今にも迸(ほとばし)

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文學大系 91 現代名作集(一)
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年3月5日