アリアじんのこどく
アリア人の孤独

冒頭文

一 私が未(ま)だ十九歳の頃であつた。 私の生家から橋一つ越えた、すぐ向うの、山下町××番館を陰気な住居として、印度人〈アリア族〉の若者、ウラスマル氏が極く孤独な生活をいとなんでゐたと云ふ事に先づ話の糸口を見出さねばならない。彼れが絹布の貿易にたづさはつてゐる小商人だと云ふ事を私は屡(しばし)ば聞いて知つてゐたが、然(しか)も、彼れの住居には何一つ商品らしいものなぞは積まれてゐ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文学大系 91 現代名作集(一)
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年3月5日