みつりんそうじけん
密林荘事件

冒頭文

密林荘で、熊井青年が自殺したという事件が、例の有名な旗田警部のところへ廻されて来た。 この事件は、その熊井青年が青酸加里を飲んで死んだという点では明瞭であるが、その青酸加里を用意したのが当人であるか、それとも他の者であるかが明瞭でない。それからもう一つの難点は、その密林荘が密林中の一軒家であって、附近に家もなく、人の通行もあまりないところであるがため、熊井青年の死の前後の状況を証言する者

文字遣い

新字新仮名

初出

「宝石」1946(昭和21)年4月

底本

  • 海野十三全集 第11巻 四次元漂流
  • 三一書房
  • 1988(昭和63)年12月15日