かえる |
| 蛙 |
冒頭文
暗い晩で風が吹いていました。より江(え)はふと机から頭をもちあげて硝子戸(ガラスど)へ顔をくっつけてみました。暗くて、ざわざわ木がゆれているきりで、何だか淋(さび)しい晩でした。ときどき西の空で白いような稲光(いなびか)りがしています。こんなに暗い晩は、きっとお月様が御病気なのだろうと、より江は兄さんのいる店の間(ま)へ行ってみました。兄さんは帳場の机で宿題の絵を描(か)いていました。 「まだ、
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 赤い鳥傑作集
- 新潮文庫、新潮社
- 1955(昭和30)年6月25日、1974(昭和49)年9月10日29刷改版